2015年5月5日火曜日

読書感想: 三年半弱かかってようやく読み終えた上下巻

Steve Jobs 氏が亡くなった年の、2011年のクリスマスに旦那がくれたスティーブ・ジョブズ 日本語版の上下巻(I & II)。自称読書家で、かなりの速読力を誇る自分なのですが、この本だけは上下巻を読み終えるまでになんと 3 年半弱もの時間を費やしてしまいました。そんなにも長くかかってしまった理由は... Pirates of Silicon Valley や、それまでの雑誌やらメディアで聞いていた Steve Jobs の人柄が好きになれず、彼が世の中に送り出した製品のいくつかはすごいと思いつつも、イコール Steve Jobs が好きというわけではなかったからでした。嫌いなものは後回し… という、実に子供じみた理由だったのですが、読みかけの本を読まず終いにする事は、読書家的にはさらに嫌な事なので、毎回長風呂に浸かりながらの読書タイムの時に、広告だらけの雑誌に飽きたら スティーブ・ジョブズを少しずつ読んでいました… が、下巻の後半はバスタブで涙しながら読みました。そして、彼が長生きできなかったのは実に惜しい、と思いました。特に最近の自分達を取り巻く環境は Steve が生きていた頃よりもさらに便利になっていて、今ですらこんなに面白い時代なのに、コンピューター業界で、時代を担って来た一人でもある Steve がこの先を見ずに逝ってしまったのは勿体なさ過ぎて、負けに等しいかもしれないとすら思いました。何をするにも体が資本なんだな、という思いや、彼がバランスの摂れた食生活や、健康にも気を使っていたら… と。彼自身、親として、子供達を健康な子に育てるには何が必要なのかきっとわかっていたと思うのですが、自分自身に対しては、体の事を顧みず好きな仕事に没頭し、偏った食生活を続け、56歳という若さで亡くなってしまったのは残念の一言に尽きました。もし彼の子供が、偏食ばかりで、好きな事にしか力を注がず、いいアイディアが浮かぶから、とドラッグに手を出すような子供だったら、彼はどう思っただろう? と。本の中でも、自分本位な人柄が描かれていましたが、彼ほど頭の切れる人間が、彼のような生活(食生活を含め)を選んだのは不思議な気すらしました。

それでも、スティーブが、家庭を持ち、親になり(かなり親バカでもあった模様)長男のリードを特に可愛がり、人生の最後を家族に囲まれて過ごせたのは幸せな事だと思いました。スティーブも親になってみて、右も左もわからないような赤ちゃんから、元気な子供時代を経て、どんどん成長していく子供達の姿を見て、ある種製品の進化の過程を見るような気がしていたのではないかな、と思います。子供は、単なる製品とは違って、良くも悪くも親から知識や思想などを吸収しながら、自分とはまた違う一人の人間に進化していき、それが親としては嬉しくもあり... 長男のリードが医学の道を選んだのは、父親であるスティーブの闘病生活の影響を受けての事ですが、そんなリードをスティーブはとても誇りに思っていただろうと思います。娘達にデレデレのお父さんというわけではなかったようなのが、少々不思議でもありますが(アメリカ人のお父さん達はだいたい娘ができると娘を溺愛する傾向にあるようなので)アップルの次なる大ヒット商品の開発の方に気持ちを奪われがちだったのかも? と思いました。

少々本題からは外れますが、スティーブ・ジョブの本の中で最後の方にビル・ゲイツの訪問の話が載っていましたが、ビル・ゲイツはスティーブと同じ時代を生きたコンピューター業界の寵児の中では、群を抜いて幸運な一人だと思いました。ビル・ゲイツのように、コンピューターおたくから、会社の CEO、そして世界でも有名な慈善事業家へと成長(メリンダの影響大ですが)できたのは、色々な好条件が重なっての事だと思います。シリコンバレーで大成功を収め、大金持ちになった人達は沢山いると思いますが、そこから先へさらに成長を遂げた人物としては、ビル・ゲイツはすごく幸運で、すごく尊敬できる人物だと(自分が元マイクロソフト社員だからという事もありますが)思います。ビル・ゲイツだけだったら、そんなに尊敬できる人物だとは思わなかったのですが、以前ビル・ゲイツのお父さんのインタビューをテレビで見た時に、「自分よりも(息子を)誇りに思う父親がいたら会ってみたいよ」とこの上ない誇りと満足そうな笑顔で話す姿が印象的で、若い頃はきっと普通に親に心配をかける子供(ハーバードを中退したり)だったと思うのですが、親にこれほどの幸福感をもたらしたという点では、アメリカでも最も幸せな親子なのではないかと思います。

一方、裕福な家庭で育ったビルとは違い、スティーブは、実の両親を知らずに育ち、生後間もなく養子に出された事についても色々と考える事が多かったようで、悩み多い若者が、自分探しの長い旅に出て、最後は自分の家族に見守られながらこの世を去ったんだなぁ... としみじみ思いました。子供を持つ親として読んでしまうせいか、子供の頃にはできるだけ悩みは少ない方がいい、というのが、この本を通して思った事でした。自分の生い立ちに悩んだり、自分の本当の親は誰なのか、なぜ実の親は自分を育ててくれなかったのか、そういう事にエネルギーを使うような人生を、自分の子供にはさせたくない... という思いから(旦那に文句を垂れまくりながらも)子供が大きくなるまでは離婚したりしてはいけないなぁ...と思ったり… 以前会社の同僚が、アメリカでは子供が中学生になるぐらいまでに、クラスの半分ぐらいの親が離婚している… と言っていましたが、自分の周りでも離婚するケースが徐々に増えて来ていています(再婚+出産のケースも増えているので、それはそれでおめでたいかも^^?) 本の中では奥さんの Laurene Powell についてはあまり詳しく書かれていませんでしたが、スティーブとの 20 年に渡る結婚生活はそれなりに苦労もアップダウンもある生活だった模様。彼女が 20 年もスティーブのような激しい気性の夫の傍にいた事は、自分は賞賛に値することだと思いました。

本題からそれましたが、自分は iPod ユーザーだった時期がゼロに等しく(実は iPod はダサいと思っていた一人ですが、iPod nano は持っている)、Mac もファミリームービーの編集以外には使わない人(Mac の iMovie はいいと思う派)で、基本 Windows ユーザー(でも Win 8 はダメだと思った派)なので、Apple 製品についてはそんなに "素晴らしい!!" と思っているわけではなかったのですが、そんな自分でもここ数年、iPhone と iPad は手放せなくなっていて、この二製品についてのみ言えば、ちょっとやそっとの事では他社製品に乗り換えないだろうな、というぐらい気に入っています。今では類似製品が他社からも出ていて、必ずしも Apple の製品が機能的にも一番というわけではないのかもしれませんが、過去 5 年余りの間にこの二製品についてはすっかりロイヤルユーザー化(^^; Apple のこれらの製品の一番の功績は、ユーザーフレンドリーなユーザーインターフェースを持つ機器の普及を推し進めた事ではないかと思っています。それは製品のデザインだったり、ハードウェアの仕様だったり、その上で走るソフトウェアだったりしますが、その全てをスティーブが作り上げたとは思わないものの、彼のような人がいないとああいった製品があのタイミングで出て来る事はなかったのかもしれない、と思いました。これからの時代、もっと面白くて、もっと便利なモノが、コンピューターに限らず色々なモノや場面で(車だったり、公共の交通機関だったり、病院や家庭での医療システムや、街角の看板だったり、オフィスのガラス窓だったり)出て来ると思います。その全てを見ずに亡くなってしまったスティーブが実に残念に思えた上下巻でした。